冬の一角獣

真城六月ブログ

2014-01-01から1年間の記事一覧

まとめをまとめられないよ

年の瀬です。とりあえず無事にブログで皆さんにこうして年内最後の挨拶を書けているということだけで有難く思います。皆さんにとって今年はどんな一年でしたでしょうか。私は今年、原点回帰を目標に過ごしてきました。いろいろな余計に思えるものごとを排除…

花火、ゲームセンター 【創作】

小さなレジャーシートを敷いてぎゅうぎゅうに座り冬の花火を見た。体育座りの変な無口と変な金髪と変な私の三人で花火を見た。何百年も前のこと、覚えていますか。どおんどおんと音がして平静を装うのに苦労しましたね。私は時々思い出し、いまだに笑うこと…

クリスマスの贈り物 【創作】

たくさんのものをもらいながら、私はその人に何一つ贈っていない事に気付きました。みんなにプレゼントをあげるサンタクロースは誰に何をもらうのでしょう。サンタクロースが仕事を終えて帰る家に灯りを点けて、暖めて、待つ人になりたいと思いました。サン…

メリークリスマス 【創作】

雑踏で聴く賛美歌は私を泣かせる。有難いから泣くのではなく、懐かしいから泣くのでもなく、ただもう気持ちは乱高下する。きたないものをきたないと思っていることに気付く。世界にきれいなものの無いような気がずっとしていたことに気付かされる。私は本当…

虹 【創作】

昨夜、写真を撮りたくて撮れない夢を見ました。もどかしかったです。カメラを構えると必ず邪魔が入ります。そして、とうとう一枚も撮れずに目覚めました。疲れて遣る瀬なかったです。朝からしょんぼりして、ワオキツネザルの尻尾に似た尾を立てて歩く猫のお…

決闘する人

吉原幸子の詩を初めて読んだのは高校の頃で『オンディーヌ』が最初でした。何も分かっていなかったのに分かったようなつもりでいました。吉原さんの詩には、愛やいたみや傷や罪、美や純粋といった実に扱いにくい言葉が使われています。これらの言葉は使えば…

嘘みたいに十二月

どういたしましょう。十二月になってしまっています。心ゆくまで秋を楽しんだか分からないままカレンダーを見るともう十二月だというのです。ほんとうに月日が過ぎていくのを早く感じるようになりました。もしかして誰か早送りのボタンを押しっぱなしにして…

異邦人(五人目)【創作】

親切な幽霊の屋敷に間借りするうち、どこにも行きたくなくなって私も幽霊になりました。幽霊は私を入れて五人います。最初に会ったのはおばあさんとおじいさんでした。ご夫婦かと思っていたら違いました。それからどう見ても十歳くらいにしか見えないのにひ…

反省文 【創作】

おひるやすみにのんちゃんが、わたしがきゅうしょくを食べるのはおそいと言いました。みんなでドロケイをするって言ってるからいくよと言いました。きゅうしょくを食べおわっていないのは、わたしとりっちゃんだけでした。わたしは外であそぶのがいやだった…

お知らせ

こんにちは。こんばんは。いつもどうもありがとうございます。お知らせがございます。アートサロンブログ「緩やかな送電線」に参加させていただくことになり、すでに投稿しております。もちろんこの「冬の一角獣」もこれから長く続けようと思っております。…

誰もあいつを思い出さない【創作】

大きな商店街の小さな揚げ物屋の猫です。俺は巨体でしましまです。とても強くてかっこいいです。皆もそう言います。その通りだと思います。夕方までは面倒くさいのでごろごろしています。お客さんは時々、寝転んでいる俺を見て可愛いとか言います。可愛いだ…

一角獣について

十一月です。あっという間ですね。私は秋と冬の始まりを楽しんでいます。寒がりですが、冬が好きです。息をしやすく感じます。冬は清潔な感じがします。だから今、嬉しいです。皆さんはどうでしょうか。温かいお茶が美味しくなり、眠るとき、肌に触る毛布が…

待ち合わせ【創作】

一杯の珈琲を飲むためにあるスタッカート喫茶店で兄をなくした弟がまた猫を失って無口に珈琲を淹れてくれる誰も救わないレクイエムは流れる語られない言葉に耳を澄まし硝子を飲むためにあるスタッカート一から順番に思い出そうとしても一がどこかわからない…

若冲の石灯籠

最近夜になると眺めたくなるものについて書きます。伊藤若冲の作品で「石灯籠図屏風」というのがあります。この作品がとても好きです。初めて目前にしたのは平成二十年に東京国立博物館 平成館で開催された「対決 巨匠たちの日本美術」という展覧会において…

スペインオオヤマネコになりたい男の子の話【創作】

去年のクリスマスに動物図鑑をもらった。ぼくの宝もの。ぼくはいつもその本を読んでる。たくさん動物のことを知ることができたのがうれしい。動物はみんなすごいんだよ。その図鑑に載ってる中でぼくが一番好きなのはスペインオオヤマネコっていうかっこいい…

異邦人(四人目)【創作】

駅前ロータリーのベンチにいつも座っているおばさんがいました。一人きりで朝から座っているのでした。私は朝、仕事に行くのにその人を見つけて「今日もいるな」と思い、夜に帰ってくると同じところにまたその人はいるのでした。寄る辺ない身の上であること…

手紙いろいろ

先に申し上げておきますが、今回は長くなります。どうしても長くなりそうですからどうぞ御目のご健康な時にお好きなお飲み物をご用意の上、ゆっくりとお付き合いくださいますようお願い致します。では、遊びましょう。 手紙が好きです。手紙に限っては書くよ…

童話を読む

童話を読んでいて頁を捲る自分の指先が目に入る時、マニキュアに驚くことがあります。さっきまで気に入っていた綺麗な色の爪を恥ずかしい代物のように感じることがあります。そして大人は子供のようにありのままでは美しくないので身を飾るのかもしれないと…

シルヴィア・プラスの湖とわたしの湖

好きな湖があります。行くとずっとそこに居たいと思ってしまいます。機会があれば足を運ぶのですが、いつも帰りには胸がいっぱいになっています。不思議な場所です。小さな湖ですから周りを歩いてもすぐに一周してしまうことになります。今年は五月にそこへ…

異邦人(三人目)【創作】

学校嫌いの男の子がいました。その子は中学一年生でした。ある日のお昼休み、彼は一人で校舎の三階にいました。廊下の窓から校庭を眺めると食事を済ませた生徒達が球技などをして遊んでいるのが見えました。彼はそれをはるか彼方を見るように見ていました。…

9月12日のしあわせな夢

私は十四歳で、それを少しも不思議に思っていない。当時好きだった、今は持っていない生成り色をした総レースのワンピースを着ている。一生懸命、髪を梳かして出かけた。デパートの食料品売り場でマリアージュフレールのアッサムメレンを買い、高層マンショ…

遠くへ行かない

九月です。 今までも今もいつもこれからもなんの役にも立たないことに心を寄せ、どうにもならないことを夢にみながら生きています。 今までを振り返っても、十分その要素に満ちた時間の過ごし方をしてきたつもりではいますが、最近はとくに孤独の大切さを感…

雨の夜 【創作】

パパとママは喧嘩したので、ママはわたしに二人でご飯を食べようと言いました。 雨が降っているのにわたしとママはお出かけしました。 ママは大きな赤い傘を、わたしは新しい水色の傘をさして歩きました。 色々な傘が売られていたのに水色を選んだのは雨でも…

皆さまへ

こんばんは。なんだか急に秋めいてまいりました。涼しいので、少し眠りやすくなりましたね。この冬の一角獣という私の拙い文章を載せたブログに遊びにいらしてくださる皆さまに今日は少し説明と挨拶をさせていただきたく思います。何名かの方にこのブログに…

今までに開けたり閉じたりした沢山のいろいろな扉のなかで一番好きな扉をすぐに答えることができます。住む家のリビングの扉です。引っ越しても新しい家にしつこく取り付けた家族にとって特別な扉です。それには母が昔デザインしたステンドグラスが嵌め込ま…

異邦人(二人目)【創作】

大げさで滑稽な妹の手紙なんで自分の心は綺麗じゃないのかって思いました。どうして卑しく汚れたんだろうって考えました。自分でも何を言っているのか分かりません。独りで、これを書きながら私は嘆いています。自分を憐れんでこのまま泣いたところで、惨め…

本棚とエリュアールと稲妻と躓き

ここ何日か空いた時間に少しずつ本棚の整理をしています。 本は多すぎるし、棚は小さく狭いので見栄えの良い本棚にはなりません。 以前に読んだものを手に取り、ぱらぱらと捲っては新たに稲妻に打たれる事も多く、足をとられやすい砂浜を歩き、しょっちゅう…

大きな観覧車【創作】

大きな観覧車になって小さな子を乗せますゆっくりゆっくり回ってその子を降ろします大きな観覧車になって大きな人も乗せますゆっくりゆっくり回ってその人を降ろします大きな観覧車ですから景色はゆっくり流れます一人ずつ乗せるので誰にも知られずなんでも…

その人

冗談が好きな人だった。ブラックなユーモアが得意だった。色白で小柄で銀色の髪の毛をしていた。プライドが高くてシャイだった。お料理とお裁縫の天才だった。お茶が好きで犬が好きで猫とお酒は苦手だった。電話はいつも尻切れトンボ、先にきった。短気なと…

異邦人(一人目)【創作】

私が高校生だった頃、原宿の竹下通りで見た青年の話をします。 その人は足枷を引きずって歩いていました。ドクターマーチンのブーツの足首にそれは嵌められていて、その部分から30cmほど鎖が引きずられ、その先に直径15cmくらいの鉄球が付いていまし…