冬の一角獣

真城六月ブログ

若冲の石灯籠

最近夜になると眺めたくなるものについて書きます。

伊藤若冲の作品で「石灯籠図屏風」というのがあります。この作品がとても好きです。
初めて目前にしたのは平成二十年に東京国立博物館 平成館で開催された「対決  巨匠たちの日本美術」という展覧会においてでした。
真夏の陽炎を見るような暑い日に上野公園を日傘を差して一人、若冲目がけて歩いたことを憶えています。
若冲の他にも対決相手に設定されていた蕭白や宗達と光琳、永徳と等伯雪舟と雪村等楽しみは目白押しで、面白い展覧会でした。
そこで「石灯籠図屏風」を観た時、鳥肌が立ちました。説明できない感動があり、強いショックを受けて長い時間作品の前にいました。それからずっと大好きです。その展覧会では他にも「仙人掌軍鶏図襖」や「雪中遊禽図」などの若冲作品が展示されていました。「雪中遊禽図」もユーモアに満ちた愛くるしい作品で好きなのですが、他のどの作品より「石灯籠図屏風」に魅了されてしまいました。
「石灯籠図屏風」は静かな作品です。どこか淋しい感じもします。清潔な空気が画の中にあるように見えます。展覧会の図録では辻惟雄が「石灯籠図屏風」についてこう書いています。

ーーさまざまなかたちの石灯籠が、まるで生きているような表情をした「石灯籠図屏風」は、石にも精霊が宿るとする若冲アニミズム思想をうかがわせる点で興味深い。


「石灯籠図屏風」に自分が何故こうまで惹かれるのかは分かりませんが、飽きない魅力があると感じます。石灯籠の近くを舞う小鳥の囀りや石灯籠にとまった小鳥の羽を震わせる音が幽かに聞こえてきそうです。

最近なぜかこの作品を観たい気持ちが募るのは不思議です。そう思いながら今夜も本を開いています。もしかしたら私はこの中に行きたいのかもしれません。静かで清潔なものに憧れています。