冬の一角獣

真城六月ブログ

スペインオオヤマネコになりたい男の子の話【創作】

去年のクリスマスに動物図鑑をもらった。ぼくの宝もの。
ぼくはいつもその本を読んでる。たくさん動物のことを知ることができたのがうれしい。動物はみんなすごいんだよ。
その図鑑に載ってる中でぼくが一番好きなのはスペインオオヤマネコっていうかっこいいやつなんだ。信じられないくらいきれいだよ。絶滅してしまいそうなんだって。知ってる?
ぼくは毎日スペインオオヤマネコのことを考えてる。
最初は本物の野生のスペインオオヤマネコを見たいって思った。でもスペインとポルトガルの森にしかいないんだって。そしてスペインやポルトガルはとっても遠い。
ぼくはスペインオオヤマネコの写真を見ているから森に行ったらきっとすぐわかるよ。見つけられる。でも森は遠いから行けない。
お母さんは大人になったら行けるわよって言うけど、ぼくは今行かないと死んでしまいそうなんだよ!お母さんはぼくをごまかしてるんだ。でもぼくはそうは言わなかった。ぼくは優しいから。
スペインオオヤマネコは夢にも出てくる。
こどもを抱っこしたこともあるし、おとなのスペインオオヤマネコにもたれてぼくが甘えたことだってある。とってもふわふわだった。
ぼくはだんだんスペインオオヤマネコになりたいって思うようになった。本気で。お母さんに言ったら、そうね。スペインオオヤマネコさんみたいに大きくて強くてかっこいい男の人になろうね。だって。ぼくはあきれたよ。お母さんはなにもわかってない。スペインオオヤマネコみたいな男ってなんだよ。変なの。ぼくはスペインオオヤマネコになりたいって言ったのにさ。
そしてぼくは色々考えた。スペインオオヤマネコになる方法を見つけたんだけどそれはだめなんだ。お母さんとお父さんが悲しむ方法だから。
ぼくはスペインオオヤマネコに食べられてしまえば良いと思ったんだよ。
ね、だめでしょう?
ぼくは毎日ふつうにぼくとして生きてる。
でもほんとはスペインオオヤマネコのことしか考えてないんだよ。
みんなそうなのかな?そうだったら良いな。
じゃあね。ばいばい。