冬の一角獣

真城六月ブログ

本棚とエリュアールと稲妻と躓き

ここ何日か空いた時間に少しずつ本棚の整理をしています。

本は多すぎるし、棚は小さく狭いので見栄えの良い本棚にはなりません。

以前に読んだものを手に取り、ぱらぱらと捲っては新たに稲妻に打たれる事も多く、足をとられやすい砂浜を歩き、しょっちゅう躓くような本の整理は楽しいものです。

数えていられないほど躓いているので一つ一つを報告するわけにはいきませんが、その中の一つを今回報告することに致します。

ポール・エリュアールの『愛 後期恋愛詩集』高村智編訳、勁草書房刊。

この詩集にはエリュアールが二番目の妻ヌーシュに捧げた沢山の詩が収められています。彼女と出逢った頃の歓びや彼女を喪った後の哀しみまで、エリュアールのありったけ、肉体も命も詩に込められているようです。

私が今回倒れこんだのは「わたしはあなたを想像した」という詩の以下の部分でした。

 

わたしはあなたを想像した

わたしが生にたいしていだかねばならぬ 大いなる感謝の念

じぶんの生にたいしてではなく あらゆる生にたいして

なぜなら あなたは狂気にすべてをささげつくす女だから

そして なにものも あなたを あなた自身たらしめることはできなかった

わたしたちがただひとつのこころしかもたぬ 寝ワラのうえで

ねむれ わたしの幼年時代よ わたしの金色の確信よ

消えうせろ 人間のかおをしたいくたの悲惨たちよ

あなたにこころをくばること それは あなたになろうと夢みることだ

 

以上は詩の冒頭部分です。詩はこの後もまだ続きます。

私がこの「わたしはあなたを想像した」という詩の中で好きで仕方ないのは、「あなたにこころをくばることそれはあなたになろうと夢みることだ」という部分です。

 

好きな人になりたいと夢みることは私が昔からずっとしてきたことです。

その考えが高まった時、いつかあなたが蛙になって干上がったら、わたしは雨になって落ちる。というような言葉をだいぶ以前に一人、書いたこともありました。

 

詩がこころの奥に閉じ込めておいた自分の本質を啓示のように突き付けてくることがあります。

静かに差し出されては気付かない時もあります。

私はエリュアールのその詩に原点を見たような気がしました。

幼く、もどかしそうな顔をしている自分に再会しました。

 

こうして躓いてばかりいるので私の本棚は何時まで経ってもきちんとしないのです。

飾り付けに失敗して傾いたクリスマスツリーのようです。