オペラとサカナはクジラ
まぼろしの現実のまぼろしの肉体の中からまぼろしのわたしがまぼろしの声を発している
わたしも?まぼろし?
もちろん。わたくしにとっては、オペラさん、あなたもまぼろしなのです。まぼろしの退屈さ。まぼろしの面白さ。まぼろしの瞬間。まぼろしの永遠なのです。
その話し方、面白い。
あんたって面白い事が多いのね。
違うよ。わたしは嫌な事の方が多いよ。
あらま。
でも、わたしよろこびはほんものだと思う。よろこびと痛みは。
ぜんぶ嘘でもよろこびと痛みはほんものなのね。あんたにとって。
たぶん。わかんないけど。
まあこの世は丸ごとが一個の機能不全家庭みたいなもんだからねえ。みんなよく堪えているよ。「権威」またの名をお父さんと「常識」またの名をお母さん。二人の存在感はおっきくて自分達の病を子供達に圧しつけてくる。そんでもって優しい子供達はなんとか生き延びようと媚びたり、反発したり。逃げたり、閉ざしたり。何の為に順応するの?この白骨化した慣習に。何に適応するの?この巨大な宗教に。救いようが無いのは、子供達も依存している訳よ。病んだ親との関係性に。箱庭。おそるべき影響の行き渡った。栄養も毒も隅々まで行き渡って。あーっ。酷いもんだ。無理。とてもマトモではやっていられない。愚かしい。許し難い。ほんとはほんとのほんとは全然違うのに。なにもかも湧いた泉の水なのに。
サカナって何歳くらいからそんな感じだったの?
生まれつき!
おんなじ。わたしも生まれつきわたしなの。
オペラちゃん。
はい。
今日は私が沢山喋ったよ。
サカナって喋らないもんね。
おやすみ。疲れた。
誰も起きていてはならぬ。
夜は沈没船。
朝が来たらクジラになってバカみたいに叫びを上げて泳ぐよ