冬の一角獣

真城六月ブログ

譜面 バーコード 電線 鉄路

 

 

譜面 バーコード 電線 鉄路

 

 

体内と体外   誰の   あなたの身体はあなたの   わたしの額にある傷は  あなたには無い   あなたの腕の黒子は  わたしには無い  寂しい? 隔てられている?  

 

 いいえ   だから  互いに出逢える

 


そうではありませんか
そうでありますように

 

 

 


食器を洗っていたよ   歌いながら   悲しい歌なわけよ   歌詞が  メロディーも   おまけにさ  歌っていた人はもう この世にいないわけよ  その人のライブに出かけて  歌っているところを観たこともあったわけよ    十年くらい経っているけれど   その人の歌いながら流していた 顔の汗まで鮮明なのよ   あんな風に懸命に歌っていたらさ   生命を使っていたと思う   だから美しかったのよ   そういうのだけよ   ほんとうのことは  この世にそんなに多くは無いからさ   そういうことを思いながら  歌っているわたしのその歌は  どこへ行くだろう  あの歌手の歌は  わたしの胸へ来た  わたしが口ずさんだ歌は?  洗い流される泡と水と一緒に  排水口へ吸い込まれて  行ってしまうだけ

 

 

 

でもさ永遠は減らないんだよ

減らない

 

 

 


オペラからのLINE


「もういやなの。利用するのもされるのも。試すのも試されるのも。ほんとは最初からいやだった。ずっといやだった。我慢していただけなの。可笑しくないのに笑いながら話すあなたを見たくないの。社会ってヒトを皆そっくりにしてしまう。そっくりさん大会なの。だから私は怪獣を探すの」

 

 


サカナの書かなかった返信


「わたしを抱きしめて文体ごと
   いえ違う
   文体だけ抱きしめて
   わたしを逃しておくれ」

 

 

 

サカナのした返信

 

「あんたの怪獣が見つかりませんように。だって見つかった怪獣はどうなるの?もう怪獣じゃなくなっちまう。怪獣が可愛いなら逃がしてやりなよ。どうしても諦められないのなら、あんたが怪獣になりなよ」

 

 

 

 

冬の陽射しは古い建物の疲労を照らしています。それは、その疲労を重ねた年月を労わるように降り注ぎます。皺や血管や細部まで物語ごと敬うように。山や海ではないところで見る光と影は人の暮らし、その匂いや音を洩らしています。誰もいなくなっても。そこで起こったことが無くなるわけではありません。誰も憶えていなくても。無くならないものがあります。

 

 

そう言ってよ
いつでも言って
わたしは言うよ
減らない
ほんとうは減らないんだよ

 

 


引き伸ばしてくれ  拡がってくれ   押し出して   謝らないわたしたちを哀れんでいるのかな地球

 

 


ただ生きものの思いを感じている
それがほんとうのものなら
何が残るだろう
何が残りますか
何を残しましょう