冬の一角獣

真城六月ブログ

透明

 

 

バーガーショップの二階から電話をかけようか迷っている。

 

 

追い出されて出て来たけれど、すぐに帰れと命じられて透明になった。

 


街に店の中に同じように透明な人が大勢いるので驚いた。透明なのは特別なことではないのね。なにも。

 

 

 

身体の中にソーダが入っていて、細かい白い泡が弾けて涼しい人が好きだ。匂いのしない良い匂いがする。少し金色の凪いだような人もいる。皆の中に真っ黒なアイスコーヒーが注がれてゆく。

 

 


半分透けている人が迷うごとに、色を変える様がかなしい。取り戻せ。いや、手放してしまえ。半分のままで良い。半分のままが一番良いかもしれない。

 

 

 


行き過ぎて氷になった人。溶け出して海になる人。人の在り方は様々だ。選べるときにも、選べないときにも。

 

 

 

雪解け水の清かな人。沸騰した熱いお湯で満たされた人。自分が透明になって初めて見える。

 

 

 

 

電話をかけようと迷っている。透明になったよ。それでなにも変わる訳では無いけれど、ゆっくり慣れてゆくみたい。それで、生きていて、凍りついたままでいても朝になることをただ感じていました。