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冬の一角獣

真城六月ブログ

メリークリスマス 【創作】

雑踏で聴く賛美歌は私を泣かせる。
有難いから泣くのではなく、懐かしいから泣くのでもなく、ただもう気持ちは乱高下する。
きたないものをきたないと思っていることに気付く。
世界にきれいなものの無いような気がずっとしていたことに気付かされる。
私は本当は納得していない。まだ何一つ納得できてはいないのだと思い知る。
とても心細く、取り返しのつかない気分になる。
気軽な様子で、浅ましい言葉をかけてくる人を恐れるあまりに愛想笑いを浮かべて進む交差点は常に煩く、疲れる場所だ。この街には静かなところなどどこにも無い。この街には欲しいものが無い。
わざとらしいクリスマスの街。
誰のために、何のために、あの歌は流れるだろう。
     いつくしみ深き
     友なるイエスは
     罪  咎  憂いを
     とり去りたもう
     こころの嘆きを
     包まず述べて
     などかは下さぬ
     負える重荷を
私は泣く。縋らないけれど、まだ泣けることに気付く。きっとおめでたいのだろう。
それでも、コートのポケットに手を突っ込んで、それでも思う。
私が生きるに値する存在でなくても、私が好きになれたもののある限り、この世は生きるに値する。
そして、さいごに思い出すのは、今、私を生かしているもののことなのではないか。
そう思えること。
誰かに「メリークリスマス」を言えること。
誰かが、それを聞くこと。