冬の一角獣

真城六月ブログ

サカナの夢日記

 

 

 

階段を下りる。電気は辺りを明るく照らしている。人はまばらにすれ違う。上ってくる誰かの髪。下りながら誰かの足。踊り場。また階段。独りきり下りる。どうやら地下鉄の。どんどん下りる。時々楽しくなって早足で駆け下りる。息が少し上がる。それが嬉しくて。生きている。行き着かない。踊り場。下りながらすれ違う人の中に、ああ今の人を知っていると一度だけ振り返る。背中。カーキ色のロングコート。黒い髪の毛。わたしはあなたを知っているのに。あなたを分かったのに。あなたはわたしに気づかなかった。それを無かったことにするために行く先を見る。振り返ってなどいない。知っている人とすれ違ってはいない。階段は続く。雑踏のぬくもり。泣きだしそうな喉に。飲み込まれる。飛び込む。階段。サバンナのインパラ。

 

 

塗ったことの無いマニキュアが塗られている爪を眺めていた。誰なんだよ、おまえは。笑ってやらないと手が哀れだから。頬に冷たい風。砂糖を焦がした匂い。たぶん。自分で自分に罰を与えようとして。もしくは、慰さめられたくなくて。公園。五歳の頃に見つけた謎は深まって、朝陽。

 

 

 

立体駐車場のインパラ。吊るされた男の髪を洗う怯えた女。ポケットの中の鍵を触る指。抜けた睫毛が刺さる眼球。

 

 

再び愛する。繰り返し同じ曲を聴く。音を食べる。凪。酔うような。朝陽を着た草原。