冬の一角獣

真城六月ブログ

ドードー鳥の胸のうち 【創作】

少しで良いとドードー鳥は思いました。

好きな人も好きなことも好きなものも少しで良いと思いました。

たくさん欲しいと思ったこともありました。たくさんあると思っていた時もありました。

しかしたくさんの物事をたくさん好きでいられるドードー鳥ではありませんでした。

ドードー鳥は一つ一つをよく見つめました。

そうするとほんとうに好きなものとそうではないものの見分けがつきました。

ドードー鳥は今までそれほど好きではなかったもののために多くの時間や感情を使ってきたために、ほんとうに好きなものを後回しにしてしまうことがあったのに気づきました。

初めて気づくことの多さにドードー鳥はびっくりしました。

ドードー鳥は自由なのです。
ドードー鳥には選ぶ権利があります。


わたしは自由なのだ。
わたしは誰にも強制されない。
わたしも誰にも強制しない。

いつも自由なのだから自由に好きなものを好きでいよう。大事にしよう。守ろう。

ドードー鳥はそう思いました。

あたりまえのことに気づくと少しだけ世界は清々しいのでした。

自由で孤独なドードー鳥は朝陽の眩しい坂道を「少しで良い!一つでも良い!あるだけで得難いしあわせなのに」と声を出さずに鳴きながら力強く上って行きました。


絶滅の少し前、あるドードー鳥の胸のうちです。