銀杏の黄色い葉 水色の
十一月に生まれた人は暑い国から寒い国へ寒い国から暑い国へ
十一月に生まれた人は燐寸乗っかる睫毛して
戯けるのが好きで 西瓜が好き
映画を観る 胸でダンサー たまにシンガー 浴室の人魚 誰も見ていないときにだけ 泳ぐ
強がりのやさしい 猫
毎日つめたくなる空気が 毎日十一月に生まれた人を 懐かしがらせ 新しくさせ
歌声
鐘の音
神社 公園通り 涙の熱
石はぶつけた時のほうが ぶつけられた時より痛いと言って 十一月に生まれた人は 世の石を拾い集めて 手が痛い 手が いつも 握りしめた手
石を隠して 隠して 隠すところがとうとうなくなると
十一月に生まれた人は 石をぜんぶ飲み込んでしまおうとする ひとつひとつ かたい かたい 石
夜に どこか遠くで ほんのすぐそばで 音がする がりがりがりり
十一月に生まれた人は 紅いドレス 見事なドレスを着ているけれど 自分では知らない それで 泥棒を恐れずに笑う
十一月に生まれた人は お茶が好き お菓子が好き 誰かの目の中に 誰も 見るな
手を洗え 髪を洗え 尻尾を洗え
また汚れられるように 高らかに
十一月に生まれた人は その
石を よこせ