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冬の一角獣

真城六月ブログ

コントレール

 

 

 

気持ちの良い日だね。

 

 

この信号のそば、ここにいつも飾られていたんだよ。花が。いつの間にか飾られなくなったけど、ここを通るときには必ず置かれていた花のピンクや白や、思い浮かぶ。アスファルトの上で鮮やかだった。そこだけ湯上がりみたいだった。

 

 

 


あの角を曲がると広い庭の家があって、そこで大きな犬が飼われていたんだよ。吠えない犬で大抵寝っ転がっていた。艶のある黒い毛をしていて、お家の人に可愛がられていた。丸い目はたれて抱きつかなきゃ気が済まない感じ。

 


あっちは夏にトマトやトウモロコシが実っているのを見る畑。おじさんと仲の悪いカラスが何度でも小さな石を咥えて落っことしに来るから、おじさんは怒って箒やなんかを振り回す。カラスが来なくなるとおじさんはぼんやりして見えた。晴れ晴れと上空澄み渡って、電線。

 

 

思い過ごしばかりだろうけど。

 

 


ここは何年か前まで通るとしょっちゅうピアノの練習する音が聞こえた道。つっかえて、逆戻りして、躓いて、やり直してって何度も。ものすごく可愛いの。間違えるたびに凍りついて止まるんだけど、それが良かった。聞こえなくなってボタンの取れたパジャマは寒い!音を探しながら歩くって、ちょっとしたもんだよ。

 

 

 

紫陽花、菖蒲、薔薇、百日紅、蝋梅、パンジー、梅、ね。

 

 

雨や風や雪や晴れすぎた日の日射しや路の上の自分のものだなんて絶対に信じられないようなこわい影を見る夕暮れ。雲と月と水たまり。飛行機。そう、飛行機。

 

 

 

公園には笑っちゃうような遊具があって、いつか夢中になった日と草や砂の匂いが同じ。怪我をしたってメロンシャーベット。血は真っ赤に流れてメロンシャーベット。夜に桜を見たベンチ。立ち漕ぎしたブランコ。うろ憶えの歌。

 

 

 

 

 

もうすぐ駅だよ。

 

 

 


靴が片方脱げちゃった。