冬の一角獣

真城六月ブログ

さがしもの

 

 

薄曇りの一日。

 

去年もらったクリスマスツリーのオーナメントを探して、一日を失くしてしまった。ツリーが出来上がる夕暮れは抜け落ちて、そのまま夜になった。

 


銀色の掌で包める星は何処へ行った。

探して探して探してもお星さまは見つからない。

 


小さな部屋の何処かに必ずあるはずの小さなものがどうしても見つからない。

 

 

落ち着かなかった。
溺れかかったように両手でクローゼットの中をひっかき回した。血眼になってアクセサリーボックスをひっくり返し、カーペットをめくった。
そんなことを繰り返し、疲れて横になり、すぐに跳び上がって起きた。散らばったアクセサリーの一つが背中にあたって痛かった。
笑うのに失敗し、泣くのに失敗した。
醜い時間を少しばかり過ごした後に、さがしものを諦めることに決めた。

 

 

空腹で、何も食べたくなかった。それでも無理にサンドウィッチを丁寧に作り、たっぷりと時間をかけて珈琲を淹れた。全ての作業は「ウィンターワンダーランド」を口ずさみながら行われた。歌の中ではソリが雪原を滑り、鈴が響き、雪だるまが作られているのに心は打ち沈んでいくばかりだった。

 

 

 

なんと巨きな小さい星!

 

 

 

饒舌な人のついに語らない言葉の中に
読書家の読まなかった本の中に
美食家の味わわなかった一皿に
音楽家の奏でなかった音の中に
着道楽の身に着けなかった衣に
発見されない星雲に
調香師の嗅がない香りに
詩人のノートの使わなかった白いページに

隠されたままのさがしもの
決して見つかるな
秘密を明かすな

 

 

 


それからすべてをそのままに入浴した。髪を洗っているときに、星の在り処が分かった。それは使わなくなった化粧ポーチに入れてあると思い出した。

 

 


深夜二時、クリスマスツリーは出来上がり、見つかってしまったお星さまは静かに輝いた。

 

 

見つけてしまってごめんね。

 

 


また大切になってしまったお星さまは背面のわずかに塗装が剥がれた部分を見せないように胸を反らしている。