冬の一角獣

真城六月ブログ

甘くする

なにがあるものを甘くするか。

学校で掃除をさぼって普段ならしないような馬鹿げた遊びをした時などに登って摘んだ木の実の正体。それをたくさん入れておいた赤黒く染まった帽子の内側の色はなんだかこわいような記憶。

はらはらして。採った実はくすぐったく甘く酸っぱかった。

それはあれでしょう。たぶんこれでしょう。

みんな似ていて全部違った。

あの時のあの木の実と同じものはどこにも無い。


なんの変哲も無い木の実をもう一度齧った時、美味しくないことがただかなしかった。


あの子の細い足。枝で引っ掻いた白い傷。あの子の笑う声。風で舞い上がった砂の飛び込んだ痛む目。隠れて貪った木の実で染まったわたしたちの赤黒い口。


なにがあるものを甘くするかを。