冬の一角獣

真城六月ブログ

春のうつくしさ

 

あちこちの桜が咲いていますね。桜だけでなく、さまざまに咲いた花をよろこびと共に見ている人も多いのではないでしょうか。花を見て感じるものは苦しいときほど迫るように思います。

 

季節の巡りが救いをもたらすことがあるように、とり残されたものを感じることもあると思います。ただ驚いて、急に鮮やかに色づいてゆく世界を見渡すことも。季節の変わり目というのは、すべての存在がほんとうに独りきりだということと、誰もが地球の一部だということとを、新しく突きつけられるみたいです。

 


陽射しがあかるいのも、眩し過ぎる人があるのではないでしょうか。暗闇が歩きづらいように、明る過ぎてもまた、ふらついてしまうものです。

 

 

「大丈夫」と言って、小さな声で眠る前、自分自身に対してか世界に向かってか分からないけれど、そう発音してから眠るようにしています。大丈夫。

 


少し前に、電車に乗り遅れそうになる夢をみました。それほど恐ろしい内容でも無いのに、恐怖と焦りを感じながら目覚めました。電車は、見たこともないはっきりとした色の新幹線に似たものでした。乗り込むと同時にドアが閉まり、すぐに走り出しました。薄暗い車内では、若い人々がちらほらと座席にかけていました。正体の分からない不安に誰も彼もがとらわれているような重たい空気がありました。車内を歩きながら、ああ誰も笑っていない。誰も寛いで安心していない。どうしたら良いだろう。と、考えていました。そうして、目が覚めました。

 


目覚めた世界はあかるかったです。それでもしばらく騒めく胸を抑えなければいけませんでした。春。春です。

 

 

薬局で、レジに並んでいた時も夢のことを考えていました。若いお母さんが、小さい人を抱っこして、わたしの前に並んでいました。小さい人とお母さんの肩ごしに目が合ったので、指で狐をつくって吠えて見せました。小さい人が楽しそうにしたので、狐にわたしの頭を噛ませて見せました。小さい人はいよいよ喜んでくれました。お母さんは気づいて、遠慮がちに笑っていました。会計を済ませ、買い物袋に品物を入れていると、さっきのお母さんが荷物と小さい人を抱っこしたまま、わざわざそばへ来て、「どうもありがとうございました」と、声をかけてくれました。

 


「大丈夫」「大丈夫」

 


春はうつくしいです。それを知っています。