冬の一角獣

真城六月ブログ

見せたい骨

 

 

棲家が必要でなくなったもの達の夢みた自由が夜になった街の外気で それをわたしたちが呼吸すると何かを忘れているような気持ちになる 冷気 靴の裏から伝わる 誰かの夢 今もあたらしく誰か夢みている それが呼吸される

 

 

 

 

みんな雷に打たれる ひとり残らず打たれる 気づかないからコンビニでヨーグルトを買っていられる 雷はもう落ちたのに その傘 髪飾り 眼鏡 治療した歯 首飾り ボタン チャック 指輪 ベルト 鞄 靴 そのお洒落 それらに落ちたの 落ちない訳が無いでしょう?あなたは既に打たれました 逃れられるはずもありませんでした あなたは頑丈です

 

 


電気 電流 ちかちか びかびか きらきら 欲だよ ほら 欲は眩しいね きれいだね 壊れそうな 壊れている 壊れるから きれいだね さかさまじゃない 手を繋いでいる かなり親密な とてもあからさまな

 

 

 


君はいきなり笑ってみた 身体が勝手にそうした するとほんとうに笑えた 君は君を生かすことが出来る それをするのが上手 君はいきなり生きる 身体が叡智

 

 

 

 

悲しいお家の中では誰もクリスマスツリーを思い出さない ある日 とても寒い日 彼は彼と同じくらいの椅子を引きずって来て それに登り 長い間閉ざされたきりだった 扉を開けた 彼はその内側を見ることが出来ないので 腕を思い切り伸ばして 手指が探しものに触るまで動かした 探しものとは違う感触が彼にあたり  彼はそれを引っ張り出した それは壊れて割れた陶器の白鳥の首だった 彼の小さい頃 白鳥は玄関にいた 首だけを何故しまってあったのか 彼にはすぐに理解出来た 元どおりに直されるはずだった 白鳥の首を彼は持ったまま 椅子の上に立っていた 白鳥の目を彼は見ていた クリスマスツリーを思い出し 飾ろうと思った 久しぶり ごめんね 彼は白鳥を見えないところへ隠し 何も言わずにツリーを飾った 悲しいお家の中でツリーはきらきら輝いた みんなは何も言わずにそれを見た

 

 

 

 

歩きながら赤い林檎を囓って 骨になったら 見せたい あなたに 見せたい そういつでももちろんあなたに 見せたい それはこれです