冬の一角獣

真城六月ブログ

コートのポケット

 

 

クリスマスツリーが飾られた空港。風邪をひいた家族。連れて来られる犬。雪を待つ額に当たったみぞれ。斜めに貼り付けられたサンタクロースと玩具屋さんのカタログが突っ込まれたポスト。サンタがパパだった歌。真っ白な生クリームに乗っかった真っ赤な苺。首に巻かれたちくちくするマフラー。プレゼントのリボンは新体操ごっこに再利用され、最終的には犬が噛む。猫が絡まる。中耳炎のとき、一晩中点いていた灯り。ストーブで焼かれたワニのぬいぐるみ。大抵血の痕がある膝。夜に見る教会の十字架。あまりに年老いた神父様が最後までミサをやり遂げられるか心配で肩が凝った。賛美歌。聖歌隊の服を着るよろこび。氷の張った水たまりのために遠回りして帰る道。新しくなる自転車。酔っ払った大人の変な目つき。大きな声。可哀想な臭い息。本が読みたい。ピアノは弾きたくない。年の瀬を一年の背中だと思った。終わっていくこと、過ぎていくこと。二度とは帰れないこと。遠くから、かかってくる電話。言いたいことを一言も言わずに、嘘ばかり言わなければならなかった電話。嘘を言う方が喜ばれること。歌を歌うアヒルのロボット。日本から車でフランスへ行った同級生。レストランも神社もきれいだった。神社には甘酒を配るやくざの人がいた。やくざの人は一番優しかった。本の方が好きだったけど。つまんない日でも本を開くとアンナ・パヴロワは瀕死の白鳥を踊るし、ジャンヌ・ダルクは焼かれた。スーホの白い馬。テーブルの上の辛い食べ物。デコピンしあって、額から血が出ていた男の子。綺麗な女性担任の脚ばかり見ながら真面目な話をする教頭。二階の窓から手を出して、触った木の葉っぱ。いつ見に行ってもひくひくしていた兎の鼻。内緒でやった餌。内緒で家に入れてしまった動物達。何も食べない日々。暖かい毛布にくるまる夜、このまま終われば良いのになと思った。目覚めると次の日になっていて、次の日は新しい年になっていたりもした。笑うこと。笑う声のこと。犬の声。鳥の。それぞれがそれぞれを呼ぶ声。名前。

 

 

 

「なんの声だろう?不思議」
「不思議じゃないよ」
「不思議じゃない?」
「今ここにいる不思議に比べれば」
「比べないでよ」
「なにも不思議じゃない」

 

 

 

 


一年、お疲れさまでした。ありがとうございました。いまがどういう日々でも、いつか懐かしむ時もあるかと、過ぎるすべてが滲むような一年の終わる頃です。あなたの年末年始が無事に良いものでありますように勝手に念じておきますぞ。わたしのためにも念じて下さい。乗り越えさせて下さい。あなたも乗り越えて下さい。みんな乗り越えられますように。

 

 

 


感謝を込めて。


またね。