冬の一角獣

真城六月ブログ

音と無音

 

 

換気扇のたてる音と食器を洗う音と薬罐を火にかけている音と

 

 

猫が食事を囓る音と誰か廊下を歩く音

 

 

遠くを走る列車の音とスマートフォンの通知音と

 

 

静かといっても賑やかな音の重なりの中で

 

 

イヤホンをせずに流れた音楽でストックホルムになる部屋

 

 

 

 

あいしているの 赤信号が「とまれ」じゃないの あいしているの

 

あいしているの ベルリンが遠くないの あいしているの

 

 

 

 

 

分からない言葉で歌われる歌を聴いて暮らしているから、デタラメに日本語にして口ずさんでいる

 

 

 


猫は一生懸命毛布を踏んでいる
のどを鳴らして踏んでいる
疲れないくらい探しものを探して

 

 

 

どの生きものも離れたところへ戻ろうとどんどん遠ざかりながら生きていく

 

 

 

みんな靴を左右逆に履く癖なんか無かったような顔をして銀行に出たり入ったりしちゃって

 

 


猫の毛布 わたしのストックホルム あなたは?キャラメル?瓶の蓋?

 

 

 

さわれなくても海風 あの子の片腕だけ写った写真 見たものを再生できる閉じた瞳

 

 


遮断機だけいつまでもカンカン鳴っている 盗人だらけの街で

 

 

 

山茶花と椿のうしろからコートも着ないで走ってでておいで

 

 


陽射しや光や音の響きの無い中で

 

 


靴を逆に履いた子