冬の一角獣

真城六月ブログ

秋は綿の味

 

 

いろいろな秋があり、読書の秋とも言いますが、わたしにとってこの秋は、どうやら読書がいまひとつ捗らない秋であるかもしれません。

 

 

読みたいと思って、いざ本を開いてもなかなか頭にすんなりと入って来ません。そんな時期もありますね。今まで読んできたものだけで千年くらいは淋しくないような気もします。

 

 


夜の風が冷たくなり、新しいものを欲しがる気持ちが凪いでいて、くったりと疲れた思考と感情を蓄えた身体を横たえるとき、思い煩うことなどほんとうは無いような気もしながら、いつまでも眠らずにしばらく聴いていない音楽や観ていない映画のことを思います。

 

 

 

生きている間は、いつかすれ違い、その時にははっきりそうだと気づかなかった二度と再び逢えない天使を探しているようです。

 

 

何故あのとき、あの人の手を取らなかったのだろう。

 

 

 

天使は自販機の下に入り込んでしまった百円玉を四つん這いになって取り出してくれたので、膝が汚れています。

 

 


だいたい笑いながら、歌いながら、なにか思い出しそうなとき、思い出せないことのなかに天使はいるのでしょう。天使はお腹が減らないでしょうし、文字も必要無いでしょう。ヒトは天使のぶん、食べたり、読んだり、書いたりしているのかもしれませんね。

 

 

 

全然助けてくれないところが天使の証です。見つからないと、天使はいるなと感じられます。

 

 


はじまりとおわりに、微笑む目蓋の微かな波立ち。

 

 

 


秋はうつくしいですね。