姿形
傘さして買い物帰り、横断歩道を渡るとき、銀の雨が花壇に降り注いでいるのを
歌の無い暮らしを
電話をかけられない日の
十五年前に着ていたコートに袖を
針と糸 針と糸 針 糸 糸 糸 糸 糸 糸
紡ぎ 連なり 繕い 解かれ ほつれ
か から から 絡まり 絡まりやすい
糸があって良かった 蜘蛛の糸でも
針が無くても 髪ひとすじでも
切れやすくても あって良かったです
見えなくても
垂れた糸を こうして 掴むことが
できます
引くことも 弛めることも できる
結ぶことも たぶん
瞳のなかに雪原があって
獣が駆けている
真昼
無限に笑んでいるもの
が
ソーダを飲ませるから
身体中あまい あまい 存在の影までも 道にうつる影も
花壇から出て歩く足取りの可笑しさ
土から抜け出て買い物袋を下げ、傘さし歩くたのしさ
おもしろい
人の形