冬の一角獣

真城六月ブログ

猫の貴方

 

どうして近づけは良いか分からなかった。きれい過ぎるとこわくなるでしょ。惹かれ過ぎると好き過ぎると触れなくなるでしょ。そうだったの。機嫌損ねたくなくて、嫌われたくなくて出会うことも一生懸命回避して。

 

 

 

だけどある日、髪を切ってもらっていた時、前触れもなくお揚げ色の大きな貴方は膝に跳び乗っていらした。初対面の貴方と目を合わせないように、鏡越しに見たくて見たくて仕方ない貴方を盗み見ていたわたしは、歓喜で叫び出しそうだった。貴方の重たさ、貴方の毛の質感に感動してしまって。

 

 

美容師さんは、謝りながら、貴方を降ろそうとした。大丈夫です。嬉しいんです。このままでいいです。わたしは急いでお願いした。心の中では貴方にお願いしていた。行かないで。そのまま!

 

 

腕に弱い痛みを感じて、それがなにか分からなかった。小さな細いなにかが腕にあたっていた。その狭い範囲。この時はわたしは発音してしまった。噛んでる!

 

 

 

やっぱり感動して、わたしは噛まれていた。貴方は噛み続けた。美容師さんは驚いて、今度こせ貴方を取り上げにかかる。貴方を払おうとする。いいんです!嬉しいんです。本当に可愛い!

 

 

 

美容師さんは困惑していたようだったけれど、わたしは貴方に噛まれていたかった。そうですか?痛かったら言って下さいね。こんな事、今までなかったんですけどね。すみませんね。いつもは噛まないんですよ。

 

 

いつもは、噛まない貴方なのに、噛んでくれてありがとう!心の中でわたしは語りかけ、感謝していた。

 


やがて噛み飽きた貴方は、わたしの膝を降りてもといた寝床へ帰ってしまった。鏡越しに見ると貴方はもう、こちらを全く気にせずに毛繕いをしていらした。わたしは貴方を熱愛した。

 

 

 

その日を境に、あちこちにいらっしゃる貴方のお仲間の方々と、親しくさせてもらえるようになった。そう感じている。貴方への感謝は尽きない。