冬の一角獣

真城六月ブログ

砂にさわる

 

 

 

 

あなたはどうしていますか。どうしていたの。なにがあって、なにがなかったの。持ちものは、他には。あなたはまだあなたですか。

 

 


わたしはまだポケットの中にチキンサンドイッチを持っている。まだ胸の内ポケットにうさぎを隠しているよ。全部そのままで。全部変わってしまった。そのままなのに変わってしまった。喉にレモンドロップがつかえたまま。うまく飲み込めなかったドロップがまだ引っかかって。時間って不思議ね。

 

 

 

陽射しが射し込んで陽だまりになったところがきれいで白い床に立っていたら、スポットライトに照らされた自由が怖くなった。独りきりであることが。あんまりあかるいと真っ暗に似てなにもよく見えない。感覚だけになれそうで、それでもすぐに感情が戻り、汚れてしまう。冷たい指先でポケットの底のあなたから奪って盗んだ石を触った。身体は陽射しで温まり、熱くなって立っているのがやっとだった。石がとても少ないんだもの!もっとたくさん欲しかった。走る度に音を立てる石をポケットに入れているのが好きなんだから。

 

 

 

繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し
あなたは?
繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し
波は打ち寄せやっと触れる
それで?
取り残される

 

 

 

 

景色が見えた。あなたが見た景色。あなたがわたしに宛てた言葉が海鳴りになってわたしをカモメにしてくれた。

 

 


遠くまで来てしまった。引き止められたくて船に列車に乗った。もう何処だか分からない。帰れなくなっちゃって。

 


振り向くと風も吹いていない。誰の足音もない。泣いてくれたことを知っているのに泣いたことを知られているのにもうどんなお砂糖も効かなくなっちゃった。

 

 


そして日毎に増えていく遺産に縋ってしまいそうなときは砂の家から砂の街。何処にもなくなったお城が昔あった辺りに指でお月さまを描いている。目蓋の内でいつまでもこわれないお城。それはここに。ここにありました。すぐに消えてしまう目印しか無いから誰も迷わずに済むのかもしれない。いいえやっぱり迷うことしか。

 

 

 

あなたがわらっている。