冬の一角獣

真城六月ブログ

夏の遠さ

 


どこを遠いと感じるかは人それぞれで状況や体調にも左右されます。

 

 

遠いところ。近くて遠いところがあれば、遙かに遠いところもあります。

 

 

遠いところ。遠さをうつくしいと思えるのはよく見えないからでしょうか。

 

 

夏は遠くありませんか。ただなかにあって、包まれていて、両腕で押し拡げて、それでどうしても遠いのでくすぐったくはありません。

 

 

 

春はくすぐったいのに夏はいつもどうして遠いのでしょう。

 

 

 

横断歩道を渡った先の向こうの歩道がもう遠い。ありもしない記憶とたしかにある気配が立ち込めて呼吸が浅い。服の裾が視線から遠い。

 

 

 

 

夏の遠さに心地良く煽られながら噛み砕いた氷の薄青い匂いをいつかの贅沢で退屈な夏休みに寝転んだまま本を読んでいた自分と分け合って七月の白い襟はちかちかとしています。

 

 


見送りながら自分の首に手をあててどこにいても海が近いと知りました。