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冬の一角獣

真城六月ブログ

オペラの手紙 【創作】

孤独は甘いものだから
あんまり激しいものだから
部屋の外を降り続く雨の音を聞いているとあの雨という水が屋根も天井も突破して光の矢になってわたしを貫いてくれたらなと思ったりします。きらきら光る髪の毛はシャワーを浴びた後よりも気分の良いものではないでしょうか。

 

あなたに手紙を書いているうちにわたしはだんだんに自分が重く厚ぼったくなっていくのを感じています。かけている椅子が軋み、椅子の脚や背が折れて、絨毯を敷いている床がめり込んで、わたしだけすっぽり崩れ落ちていかないのは不思議です。わたしは椅子や床を信じていないので怯えています。なにも信じていないので自分が今、動かしているペンが紙に文字を記していることも不思議です。分かるのは、指が疲れ始めていることです。それから、喉が渇きます。

 

最近はよく雨が降ります。夕焼けや朝焼けや月や雲やいつも新しくうつくしいです。


昨日まで、わたしの部屋には名前の分からないものがいました。それは白い羽のような綿のようなものでした。それを最初は虫だと思って恐れ、次に獣だと思い恐れました。あんまり、それが動かないのでわたしはそれを温順しく、優しいものだと決めました。でもやはり怖かったです。そのうちに、わたしはそれの存在を疑い始めました。錯覚ではないかと目を凝らし、おそるおそる近づいて凝視めました。たしかにそれはありました。また、それを自分の心が見せているものではないかと疑いました。ゆっくり寝み、目覚めてみても、それは消えませんでした。幽霊や天使や幻や座敷童子や妖精や魂やなんでも良いからそれの正体が知りたかったのですが、途中からそれも諦めてしまいました。だって、何故それがなにであるかを決めなければ、知らなければならないのでしょうか。わたしは考えるうちに馬鹿らしくなってしまったのです。それどころか、わたし自身とわけのわからないそれに明確な違いを感じなくなっていきました。なんだかよく分かりませんが、どっちがどっちでも同じような気がしました。相変わらずそれを恐れていたわたしでしたけれど。

 

あるとき、それはいなくなってしまいました。可笑しなことと思うけれど、わたしはあれだけ疎んじていたものをかなりしつこく探しました。部屋の外まで。どこにもそれがいないと分かったとき、違う種類の不安が込み上げてきました。

 

 

それはいたらこわいし、いなければいないでこわいものなのでした。

 

 

 

わたしは元気です。あなたはお元気でしょうか。あなたは時々最後の晩餐のようにこわいです。どうか好きなものを食べてください。最近観た映画、読んだ本で素晴らしかったものがあれば、どうぞ教えてください。雨が終わり、涼しくなったらどこかへ一緒に行きましょう。行かなくてももちろん良いです。知らんぷりが一番です。

 

 

手紙の終わりは難しいものです。先に手を放してあげます。またね。

 

 

 

 

 

 

 

 以下、サカナからの返信。

 

 

 

あんたそれ埃よ!掃除しなさい。