冬の一角獣

真城六月ブログ

燃える路を歩きながら、手のひらから呼吸して、小さな湖の畔りから向こう岸を見たときの肌寒さを思い、苦心して、燃える路を歩きながら、再び畔りに立った。向こう岸にはあの日の自分が立って、此方を見ている。燃える路を歩きながら、誰もいない。足下には澄んだ水が流れている。

 

 

 

 


空は真っ青です。誰かの肩を掴んでしまいそうに百日紅が騒めいています。むかし、この白や薄紅の花を母の母が好きだったと聞きました。いまはわたしが見ています。それはとてもすごいことですね。空は真っ青で、百日紅の下、日傘を差して歩きます。

 

 

 

 

 

 


帰れなかった日々の償いに貰った小鳥は籠の中からわたしを見つめておりました。頼りなく細いとまり木を掴んだ後肢は魚の骨のようでした。首を傾げ、鮮やかな翼の小鳥はこう言っていたのではないでしょうか。あなたはだれ。あなたはだれ。わたしはこう答えるべきでした。もっと大きな籠に入っているものです。

 

 

 

 

 


燃える路を歩きながら、壊れてしまったオルゴールの奏でた音をルルルと真似てみても、夏は夏のままだった。

 

駅に着くとホームで誰かがジュースをこぼして、誰かの叱る声と誰かの笑う声と鳩の飛び立つ賑やかさ。

 

 

鍵盤蓋は閉じられた。

 

 

 

電車がやって来て、乗り込んだ窓の向こうでいまが泡になった。