冬の一角獣

真城六月ブログ

巡る遺失物



置き忘れたノートに書かれる言葉の数々は

置き忘れられたペンを使って書いた名前は



世界のことを語るにも
思い馳せる範囲のみ
それでも知ったことをしか



だれかに教わり知った世界の
空を見て街を歩いて
動かないものや生きものに気づき
それらがなになのか
一人では分からなかったことを
だれかが教えてくれた
質問もなく説教もなく約束もなく
だれかは教えてくれた



だれかが教えてくれたのでひっくり返ってゆっくり回り、あれは驚異、これも驚異。懐かしい世界で





神秘は触れられる


思いにも影があり、陽だまりは撫でると微笑う




泣きすぎると空を飛べる





街路は泳げる





アクシデントはアクシデントを抱きしめる





いつか吹雪の中で小さな枝になり




桑の実を初めて口にしたのは二百年前






だれかに教わったことで世界は
膨らんだ膨らんだ
あの子の手放してしまいそうな青い風船





振り向いたあの子の髪にいつかのわたしのリボン