冬の一角獣

真城六月ブログ

喉を渇かし

読みました。『ジョゼフ・コーネル   箱の中のユートピア』デボラ・ソロモン著、林寿美、太田泰人、近藤学訳、白水社刊。夢中になって読みました。

最近は良い本を新訳で読めたり、相変わらず以前から好きな本を再読したりしていましたが、この本は初めて読むものでした。好きなジョゼフ・コーネルのことが書かれていまして、よりもっと彼を好きになりました。無かったことには出来ないものが身の内に入ってきてしまいました。生きているって面白いです。こんなに嬉しくなったのはいつ以来だったろうと思いました。伝記というジャンルに入る『ジョゼフ・コーネル   箱の中のユートピア』ですが、伝記好きでない方、詩や文学を好きな方、独りであることを大切にしている方にお勧めします。




他の本の話も少しだけ。最近再読した中であらためて良かったのは日影丈吉の『鳩』というタイトルの晩年に書かれた短篇が主に収められたものです。早川書房刊。『冥府の犬』という作品が昔からお気に入りです。また、未刊行初期短篇の二篇もどちらも良く、特に好きなのは『ヨハンの大きな時計』という作品です。冷たい金属で出来た時計を温かい愛する人の心臓として受け取ったヨハンは詩人でした。最期までヨハンを守り、健気に鼓動を打つ時計のうつくしさは心に残ります。読後、いつも自分の腕時計などを耳元に寄せ、コチコチという針の音を確かめてみたくなります。誰かの心臓では無い時計でも常に針を動かす音を聴かせてくれるのは、ちょっとすごいことのように思えます。




気がつけば十一月も半ばとなりました。毎年気忙しくなる頃ですが、今年は少し余裕を持って過ごしてみたいです。


日ごとに寒くなります。どうぞお元気で。