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冬の一角獣

真城六月ブログ

いつかそれをみた 【創作】

様々なものに満ちた世界にいた。

そこでは無くなるものを愛でる慣習があった。無くなるものを愛でるだなんて彼らどれほど向こう見ずに勇敢な人々だったろう。

とりわけ儚いものもいくつかみた。

みているうちに何故それらのものに人々が惹かれるのか分かった。

あそこの人々はよく知っているんだね。自分たちの行く先を。失われない私たちにはあのかなしみを味わえない。

それが日々失われていくとして。それがやがて朽ち果てるとして。いつかいなくなるそれだとして。いま、いなくなっていく途中のそれだとして。そうしてみた時に初めてその世界を満たすもののうつくしさを知った。


うさぎや砂のお城や蜃気楼や珈琲の湯気や万華鏡を覗いた先や箒星や落陽や波や朝焼けや氷菓子や泡や煙やあまりに短い間にあって消えゆくものすべて。


人々の笑みの中にあるかなしみもやがて消えていくものとして朧に静かに蘇る。


いつかそれをみた。