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冬の一角獣

真城六月ブログ

不便な翼 【創作】

理由を原因を持つ現象は良いものね。

目に見えるものはそれが確かにあることを分かった気分にさせてくれるもの。

やはり人は行き着くところ安心を欲するものかしら。

近づくこと近づかずにいることを選べるのは良いね。

手に入れるのも手に入れないのも自由でいられることは気楽だわ。

手に入るものだけ手に入れられるだけのことよ。

望まざるものの発生には当惑するね。

特別がいつも素晴らしいとは限らない。


ほら、あっち向いて。
こっち向いて。
どこも見ないで瞼を閉じて。


何度見直しても翼のある背中。


あるべきものが無いことも、あってはならないものがあることも異常とされる現実において翼を持つ身で生きるのは過酷でしょ。

人々はその者を憐れみ、疎んじて、見ないようにするかもね。

安心したいという当然でささやかな切なる願いから人は異形を排除する。


過剰も欠陥も赦されない吝嗇の狭い領域で背に翼を持つ者の苦悩はきっと深いものね。


折角の飛翔も叶わない。誰にも見られず羽搏くことなど出来はしない。

衣服もまともに身につけられず、翼はどこまでも邪魔になる。

不要の無用の無益の。

厚ぼったく重なった一枚一枚の柔らかな羽毛はなんのため。

白や灰色に光るこの翼は。

恥の象徴でしかないそれであったとしたら。


なんのため。
なんのなんのなんのため。


翼を忘れて彷徨いたいと願っても何処を歩けるものかしら。


切る、焼く、毟るが出来なくて。

可愛い可哀想な翼。


ほんとうは失いたくない翼を失わずにいるために天使は身体ごと跳び上がり、二度と還らない。


月にぶら下がりやっと笑った者を誰も知らないけれど、あるいはこんな声が。




失ってはいけません。
失えないはずです。
それはあなたのものだからです。