読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

冬の一角獣

真城六月ブログ

メロンソーダの泡の粒

に見蕩れて二時間レストランにいました。炭酸飲料は苦手であまり飲みませんが、真夏のように暑かった日、久々に飲んだメロンソーダは美味しくて綺麗でした。
人工的なキャンディーグリーンがなんとも安っぽくて可愛らしく気分が浮き立ちます。身体に悪そうで甘ったるくて良い香りのメロンソーダを半分ほど飲み、グラスの内側でシュワシュワしている泡の粒を見ているとなんだかあんまり綺麗で感動してしまいました。
初めて見るのでもないのにどうしたというのか分かりませんが、ほんとうに突然メロンソーダは綺麗でした。泡の一粒ずつがもどかしそうに緑の水面に立ち昇り、弾けて消えていきました。
私は汗をかいたグラスをいつまでも緩く右手で包み、メロンソーダの泡の粒に見蕩れました。心の中が静かに清潔に心地良く冷んやりとしていきました。


五月に入り、お天気の日が続きました。連休だった方、そうでなかった方、お元気でしょうか。五月ですから薔薇をたくさん見られそうですね。風と光と緑の五月を今年も見ることになりそうです。

今回はお休みの日に読んだものからいくつか引きます。愉しいな!


     『縁日』     竹中 郁

 埃っぽい縁日の雑沓のなかで、わたしは母を見失った。鏡や電飾の入り擾れた屈折を、わたしは泣き喚きながら捜しあるいた。


 その夜、わたしは頭の上に星を見た。はじめて眺め得るもののような異様な星が夜空を深めていた。わたしは一人で大地を歩き廻れるのである。
 一人歩きは麻薬である。
 一人の少年を急に老けさせる。
 わたしの母の後姿を
 恋人のように眺める日さえ屢あった。

 今宵占師が叫んでいる赤い敷物の上に、星でちりばめられた顔の絵がある。母と成長した子とが、お互に疑ぐりあって、立ち停って見ている。
 二人の背後から覗き込もうとする年月は、黒い重たいマントを着けている。



   『亡命者』    長谷川龍生

ぼく、つぎの駅で下車します。
味気ない旅ですが、さようなら、
鼠が殺された話もでなかったですね。
あなたは走る風景をごらんになってた。
ぼくは、軽い食事をしたり
新聞で兇悪犯人を追跡していました。

あなたは、ずっと、このまま
終着駅まで、一枚のきっぷで
旅をされるのですね。
網棚の上にふくらんだ黒いバック。
単線鉄道のようなあなたの計画、夢。
名物にうまいものなし……わかっているんです。
隧道へ入るとあなたは目を閉じました。
ぼくは、隧道がつぶれて
もぐらの死骸になるのかとふるえました。

ぼく、つぎの駅で下車します。
途中下車の常習犯です。
他人が先へ先へいくのを
さっと見送るのが好きなんです。
時間をぐんぐんずらしていくのが
ぼくの発信する作戦要領です。
果物の皮がここに落ちていますね。
まだ煙草のさきに火がついていますね。

ぼく、亡命者です。
ちょっとした亡命の旅ですが、さようなら。
ぼくが、どこから乗ったか、ご存知?
ぼくも、はっきり記憶がないのです。
あなたの目には、ぼくも風景の一つです。
それで、いいのです。
それで、ぼくの暗号が生きるのです。
あなたの終着駅は、明後日の午前一時二三分、
それも、ちゃんと、発信してあります。
ぼく、つぎの駅で下車します。




フランス歌謡   堀口大學

愛するとは少し死ぬこと
愛する者のためゆゑに少し死ぬこと



最後に今頃ぴったりかもしれない有名過ぎるシャンソンを。

   『桜んぼの実る頃』   橋本千恵子訳

桜んぼの実る頃は
陽気なうぐいすも、おしゃべりつぐみもみんな浮かれ出す
美しい女達は、すっかりのぼせ上がり
恋人達は、心も朗らか
桜んぼの実る頃は
おしゃべりつぐみもすてきにさえずる

けれど、桜んぼが実る頃は短い
皆二人連れで、夢見ながら
耳かざりを摘みに行く季節は
おそろいの服を着た恋の桜んぼが
血の滴りのように葉かげに落ちる季節は
けれど、桜んぼの実る頃は短い
夢見ながら摘むさんごの耳飾りに季節は

桜んぼが実る頃
恋の悩みの怖いお方は
きれいな女を避けることです
むごい苦しみを怖れないわたしは
苦しみのない生活をしようとは思いません

桜んぼの実る頃
あなただってきっと恋に苦しむでしょうよ

私は桜んぼの実る頃をいつまでも愛する
桜んぼの実る頃、わたしの
心の中に傷口が開いたのです
そして、運命が私にほほえみかけたって
この痛みを鎮めることはできないのです
私は桜んぼの実る頃をいつまでも愛する
私の心の中の思い出も愛する





まだたくさん引きたいものはあるのですが、また今度にしたいと思います。
んー愉しいな!

お付き合いくださってありがとうございました。ではまた。あでゅう。