冬の一角獣

真城六月ブログ

シルヴィア・プラスの湖とわたしの湖

好きな湖があります。

行くとずっとそこに居たいと思ってしまいます。

機会があれば足を運ぶのですが、いつも帰りには胸がいっぱいになっています。

不思議な場所です。

小さな湖ですから周りを歩いてもすぐに一周してしまうことになります。

今年は五月にそこへ行きました。

平日だったこともありとても静かでした。

存分に眺めて離れ難く感じながら、また来ようと思いました。


本の中での湖ならシルヴィア・プラスの『湖水を渡って』という詩集を一番先に思い出します。

そこにもこの上なく静かで離れ難い湖があります。

行きたい湖が遠い時、私はその詩集を読みます。

彼女の湖はいつも蒼ざめてそこにあります。

それでも私は彼女の詩に陽だまりや砂漠の砂のような熱を感じます。

『湖水を渡って』の中で最も好きな詩は「私は垂直に」というものです。
以下に一部抜粋します。


今宵     かすかに瞬く星のもと
樹も花もひんやりした麗香を放っている。
私はその間を歩むけれど    誰ひとり気づいてくれない。


ふと想う     もしも私が眠っていれば
彼らに完璧に似るのにーー
さまざまな想いは霞んでゆく。
私には横たわる方がずっと自然。
そうすれば空と私は素直に語りあえる
横たわったとき     私は活かされる
そのときこそ樹は私に手を差しのべ      花は時を共にしてくれる。



以上、思潮社の高田宣子・小久江晴子訳シルヴィア・プラス詩集『湖水を渡って』に収められている「私は垂直に」より。


五月に見た湖の写真を載せておきます。
落葉の頃、雪の降る頃はまたどんな様子になることでしょう。楽しみです。
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