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冬の一角獣

真城六月ブログ

異邦人(三人目)【創作】

学校嫌いの男の子がいました。その子は中学一年生でした。

ある日のお昼休み、彼は一人で校舎の三階にいました。廊下の窓から校庭を眺めると食事を済ませた生徒達が球技などをして遊んでいるのが見えました。

彼はそれをはるか彼方を見るように見ていました。実際に彼には級友達がずっと遠くに感じられるのでした。

彼には皆が天使のように見えました。

彼は自分の屈託を煩わしく、情けなく思っていました。自分の憂鬱を下らなく汚く感じていました。悩むことは格好悪く思えましたし、悩まないことは不真面目で更に格好悪く思えました。なにをしてもどう振舞っても彼の心は晴れないのでした。早く大人になりたいような、そうでもないようなどっちつかずの気分でした。

つまり中学生らしい気分でした。彼は最近生まれてはじめて自分でものを見て、自分で考える練習をしているのでした。やっと、それまで感じていたことを頭の中でそれらしくまとめたりするようになっていました。彼の柔らかな若い頭はいつも熱っぽく、背伸びしたり綱渡りをしたりしていました。

ふらふらと。ふわふわと。

窓辺にもたれて彼の考えたことはこうでした。

僕はあまり性格が良くない。そして体も丈夫とは言えない。勉強もそんなに出来ない。特技だってない。とても普通の大人のように生きてはいかれないのじゃないかな。

不安な彼は必要もないのに首に手をあてました。脈打つ自分の首は恐ろしく、彼はすぐに手を下ろしました。

出来るかもしれないことを出来ないと先回りして言うのは逃げているだけだと思われてしまうかな。おこがましいかもしれないけれど、僕は身近な人の役に立ちたい。僕が守り、助けられるのはきっと限られた数人だろう。それには自分の頭の上の蝿をいつもきちんとはらっておかなければいけない。

彼は向き直り、何もない真っ白な廊下と窓の向かいの壁を見ました。背後には級友達の燥ぐ声が可愛らしく響きました。清潔な学舎を病院のようだと彼は思いました。

僕は自分のエゴを自分の内だけで押し殺して生きていきたい。なるべく誰も巻き込まずに一人でやり過ごしたいものだ。それで、なんでもなさそうにしていたい。出来るだろうか。こいつは大変だ。

幼い興奮は耳鳴りを起こして彼を揺さぶりました。

やがてお昼休みの終わりを告げる校内放送が流れ、彼は無理に微笑みながら教室に戻っていきました。


その子の悩みを実はそのまま抱えて私は大人になりました。いつでも自分の中のその子を隠したまま、あの時のように無理に微笑みながら生きています。なんとかまだそうして時を繋いではいるのですが、果たしてどこまで続けられるやら。察しの良い人には既に勘付かれていることでしょう。そして、かなしく面白いことに私は私のようにいつかの自分を隠したままで重たそうに生きている人を何人か見つけました。かつての自分を身のうちに抱えた人は笑い方が違うのですぐに分かります。おかしな大人になってしまったものです。まだとうぶんおかしな大人をやるしかなさそうです。