冬の一角獣

真城六月ブログ

春は読みもの

あたたかくなってきました。 春は足が歩き、心が歩き、肩がコートを脱皮したがって、頬があかるくなって、眠たいですね。雨だけ、冷たい銀色です。身体の外側で自分が踊っていて、なかなか戻ってこなくなるような春です。 同じ本を読んでいます。いつもそう…

らしさ らしさ

水色、ピンク色、紫色、赤色、黄色、色とりどりのペンや缶バッジ。例えば、小さなノベルティなどを頂く際、お店の方は「どのお色になさいますか?」と、選ばせて下さることがあります。 好きでない色は無いし、どれもきれいだと思うときなど、ご迷惑かもしれ…

『結び目』について

前記事『結び目』について、補足を少ししておきます。 前記事に限らず、全ての文章をご自由に解釈して頂くことを望んでいますが、『結び目』においては私から出たのではない言葉を取り入れています。『結び目』の最後の段は私自身が学生時代に実際に教師から…

結び目

椅子を持って校庭に出ましょう。 いまは、十時です。十時十分までに並び終えて下さい。 山に登ります。休憩は二時間後です。 食事です。残さず食べましょう。感謝しましょう。よく噛んで食べましょう。早く終えて片付けて下さい。 服を脱いで並んで下さい。…

猫の貴方

どうして近づけは良いか分からなかった。きれい過ぎるとこわくなるでしょ。惹かれ過ぎると好き過ぎると触れなくなるでしょ。そうだったの。機嫌損ねたくなくて、嫌われたくなくて出会うことも一生懸命回避して。 だけどある日、髪を切ってもらっていた時、前…

お届けもの

粉雪綿雪雨のち花吹雪待ち 行き過ぎる電車の音を聞く夜々 身の内を流れ巡り笑い方になる過去 指に巻きつけたあやとりの糸縺れ縺れ 光に触る胸の痛みが手放したときに冴え いつも帰るように眠る日毎の夢をみること もうすぐバレンタインデーです。 上にある言…

雪に降られて赤い花

日が暮れはじめた頃、カフェで友人に手紙を書いていた。 ミリアムもトトもいない街で本を買いに行きました。その本は売られていませんでした。 「薬屋さんで薬を買って帰るからね」 そういうことの度にシュペルヴィエルの青年や賢治の少年は甦る。きれいな若…

星空

年が明けて十日も経ちますと、年末の頃の感情を遠く感じだします。クリスマスソングはまだ頭の中に鳴り続いていて、お餅を食べているサンタさんと七草粥を眺める何処かの七面鳥と富士山と日の出とほっぺたツヤツヤの新成人の中振袖が華やかにゆっくりと通り…

冬の忘れもの

いつもお付き合いくださっている皆さま。 気にかけてくださる特殊な皆さま。 一年間過ごしていらしたことお疲れさまでした。 この一年の感謝を申し上げます。どうもありがとうございます。また、お気づきかもしれませんが、更新が減ってしまったことをお詫び…

ゴースト

これは優美な甘美な屍骸になる過程のあまり優美でもなければ甘美でもない肉体というか単に身体である。かもしれないし、違うかもしれない。これはその中で笑う骨である。血は歌いつつ流れ、行き止りの見つからない夢をみる。闇に於いては光を光に於いては闇…

砂にさわる

あなたはどうしていますか。どうしていたの。なにがあって、なにがなかったの。持ちものは、他には。あなたはまだあなたですか。 わたしはまだポケットの中にチキンサンドイッチを持っている。まだ胸の内ポケットにうさぎを隠しているよ。全部そのままで。全…

オペラがピエロ 【コント】

あんたは隠し事が出来ない。あんたとは秘密を共有していられない。リスクしかない。だから重要なことはあんたに打ち明けられないってこと。こっちが気をつけるしかないね。何度冷や汗かいたか。憶えてる?こっちは忘れられないけどね。あんたとわたしと旅行…

銀杏の黄色い葉 水色の

十一月に生まれた人は暑い国から寒い国へ寒い国から暑い国へ 十一月に生まれた人は燐寸乗っかる睫毛して 黒い瞳 戯けるのが好きで 西瓜が好き 映画を観る 胸でダンサー たまにシンガー 浴室の人魚 誰も見ていないときにだけ 泳ぐ 強がりのやさしい 猫 毎日つ…

X へ

初めにおことわりしておきます。これは夜に書く手紙です。 時折ふと、あなたを思い出します。あなたは少しも素敵にならず、素晴らしくもならず、あなたのままで蘇ってきます。あなたの訳の分からない矛盾した態度や言動をそのまま思い出します。様子や仕草は…

レイ・フォードの詩集

存在しない本で読みたい本があります。それはたとえば、本の中の登場人物が書いた本などで、世の中の隅々まで探したとしてもどこにもありはしないことは分かりきっているものですが、読んでみたくてたまらないものです。 わたしが昔から読みたいのは、レイモ…

荒地の盗人萩

行く道は薄桃色で脆い空気のせいでそれを吸い込んだ全身の血液が甘い行く道はただ珍しく再びは来ない道と知らないから似合わない服で過ぎる蟻を踏みミミズを踏み植物の種をしばらくくっつけたままの靴底は汚れずにいられる術もなく罪を増やして足よりも少し…

持ちもの

むかし一度行ったきりの家にあった小さな置物がどうしてか長い間、自分の内に残っていたのでした。 それが置かれていたテーブルに一緒に並んでいたものなどは滲み切った背景のように遠く、何ひとつはっきりとは憶えていないのに小さな女の人の立像だけいつも…

朝焼け

雨の多かった八月のある朝、うつくしい空を見ました。 昔から好きでよく見たり、写真に撮ったりしていたのは落日ばかりでしたので、たまには朝の空をと思い、下手なりに写真を撮っておきました。胸が騒ぐような朝焼けで、興奮屋の自分はすぐに手が震えてしま…

芙蓉 白芙蓉 羽衣

雨ばかり降る八月のある日、なりたいものは芙蓉で白芙蓉で羽衣でした。 天女に憧れるのではなく羽衣に憧れるのは、アリスにではなくエプロンドレスに、仮面ライダーにではなくバイクに憧れるようなものでしょうか。 でもエプロンドレスに憧れる人は、それを…

翠煙

玄関のドアを開けて外へ出るとお線香の香りがした。 蝉の声と湿った緑色の空気に包まれながら駅までの道を歩く。身体は乾いて、乾かして歩く。憧れは空っぽだから。空っぽになるまであと何歩。 小さく狭い棚は撓んでいる。押し込まれて圧し潰されて人形も書…

夏の遠さ

どこを遠いと感じるかは人それぞれで状況や体調にも左右されます。 遠いところ。近くて遠いところがあれば、遙かに遠いところもあります。 遠いところ。遠さをうつくしいと思えるのはよく見えないからでしょうか。 夏は遠くありませんか。ただなかにあって、…

七夕過ぎてつれづれ

暑くなって、陽射しが痛くなりました。 いつにも増してぼんやりとしてしまう夏にまた身を浸しています。 気分は刻々移ります。狭い人間なので同じところを時を置いて巡ります。 このブログを始めてから来月で三年にもなります。読み返すといつも同じことを書…

七月

開けなかったピアスの穴の無い耳たぶで ガードレールにもたれている 着替えた服は鞄に入れられ膨らんで 駅のロッカーで汗をかいている この星 曇りガラスを見るように街を触る目が 充血して白いところの赤さに疲れている この星に ボタンの取れたブラウスの…

ひろがる日

「紫陽花、さようならあ」 大きな声で元気よくそう言って走り去る見知らぬ子供の後ろ姿を、なんてうつくしいんだろうと、感じ入って見送っていたら、子供に向かって「おおう。さよならあ」と、声をかけている男性が目に入りました。 一瞬で、さっきの言葉が…

迷信

山脈が海に沈むことはあっても、富士山はお茶碗に入らない。 流れに逆らうことは、身体に悪い。それでも、思念が留まりたがったり、流れに逆らったりする限り、身体には苦痛を忍んでもらう他ない。そうして来たけれど、いつまで保つかしら。それがいつまでも…

綿菓子

綿菓子 綿菓子 綿菓子 綿菓子 綿菓子 綿菓子 綿菓子 綿菓子を手のひらで 小さくして ぽいと口に放り込み 飲み込んでしまった人がいた 戯け方のたどたどしさが印象に残っている 雨の日に 灰色の窓の外を見ながら 眠たげな猫に戯けて見せてみても あのうつくし…

オペラとサカナ 【創作】

パーティーの後、音信の途絶えたサカナについてオペラが語ったことと思ったこと。 彼女は萎縮していたのではなく、当惑していたの。わたしにはそれが伝わってきたみたい。 沈黙に理由を求めるなんて訳が分からないけれど、的はずれな理由を勝手に拵えて決め…

空木

ひとりの夜には家じゅうの灯りをつけて 報せを待ちながら 報せから逃げながら カーテンを開けばかがやくお月さまがあることを悲しんで感謝して 窓の外 手を差し出せば 涼しい夜を感じられることがどうしてかこわくなる 何処かそれほど遠くないところから花の…

置き土産

駅の改札を出たところで待ち合わせをしていた頃、遅れてやって来た友達に「改札口で君のこと いつも待ったものでした」と、唄って迎えたことがありました。友達は、何その歌?と知らないようでした。当たり前です。わたしも親が唄っているのを聴いて覚えたん…

脆い鬼のための小品

降る雨が幽かな声で「うれしい」と言いながら花に落ちました。 「うれしい」 「うれしい」 雨の雫を受けた花は微笑んだり、驚いて震えたり、それぞれでした。 そうしてすべての花びらが雨を真似た囁き声で「つめたい。あったかい」と言いながら散っていきま…