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冬の一角獣

真城六月ブログ

贈りものやケーキの箱の赤いリボン

誕生日やクリスマスを思うと閉じた眼に赤いリボンが見える。贈りものの箱や袋の中には欲しかったもの、または、初めて出会う嬉しいものが入っている。わたしはいつもすぐには包みを開けずに箱や袋を凝視めた。リボンのかけられた贈りものは包みを解く前、不…

赤いリボン

雪の降る日の赤いリボン熱を出した夜の赤いリボン君を見ぬ日の赤いリボン指の間の赤いリボン犬が来た日の赤いリボン忘れられた赤いリボン嘘を聞く日の赤いリボン祭りのあとの赤いリボンどこにもない赤いリボン彼の胸の彼女の髪の手紙の束の赤いリボン人生の…

冬を集めて

師走です。どんなにぼんやりとしていても街を歩けば年末の雰囲気に包まれます。お店にはクリスマスソングが流れています。ついこの間まで注文していたアイスコーヒーはホットに変わったという方も多いかと思います。私は喫茶店が大好きで珈琲や紅茶はいつで…

喉を渇かし

読みました。『ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』デボラ・ソロモン著、林寿美、太田泰人、近藤学訳、白水社刊。夢中になって読みました。最近は良い本を新訳で読めたり、相変わらず以前から好きな本を再読したりしていましたが、この本は初めて読むも…

そしていつかそれをみた

私たちはお互いのかすり傷を慎重に見せ合う。大きな傷、深い傷は慎重に隠しながら、なんでもない引っ掻き傷を一つ一つ見せ合う。血の河は流れる。身体の中を騒がしく流れる。その騒がしい音を聞きながら。遊園地のそばつぶれそうに見える古い喫茶店愛想の無…

いつかそれをみた 【創作】

様々なものに満ちた世界にいた。そこでは無くなるものを愛でる慣習があった。無くなるものを愛でるだなんて彼らどれほど向こう見ずに勇敢な人々だったろう。とりわけ儚いものもいくつかみた。みているうちに何故それらのものに人々が惹かれるのか分かった。…

微笑の理由 【創作】

彼女は帰りたかった。立ち去りたかった。彼女は帰れなかった。頭痛がはじまっていた。テーブルの向こう側にいる人の顔を見ないように視線を微妙にずらすうち、その人の顔を忘れていった。その人の話す声は最初、耐えられないほどうるさく、そのうち遠くで鳴…

手紙の下書きのような

たまにはまったくただのメモです。最近読んだ、読み返した本をメモしておきます。良いものばかりでした。『海に住む少女』『ひとさらい』ジュール・シュペルヴィエル、光文社古典新訳文庫『現代詩手帖特集版シモーヌ・ヴェイユ 詩をもつこと』思潮社『重力と…

オパールひきがえるマルテ

十月です。空気がひんやりとしてきました。最近は外に一歩出るたび、ガッツポーズしたくなります。好きな季節がもう目の前という感じなのです。よしよし、良いぞ。秋の空、北風。夜空の星はぐんぐんはっきりしていきます。暖かくて肌寒い秋の次は清潔な冬が…

猫ぎらいの猫おばさん 【創作】

猫ぎらいの猫おばさん悪口言い言い猫に囲まれ暮らしてるしかめ面して猫といるこわいこわい鬼のようなおばさん猫屋敷に住んでる猫屋敷毎日賑やかだ猫たちおばさん好きだった人々おばさんこわかったおばさんおばさんいつも猫いつもいつも猫ばかり猫ばかりおば…

内に騎士棲む少女

内にロビン・フッド棲む老爺。内にアリス棲む老婆。内に海賊棲む御曹司。内に怪獣棲む雲雀。内に武将棲む兎。内に妖精棲む闘牛。内に鬼棲むレース編み。内に母棲む少年。内に我が子棲む泥棒。内に銀河棲む猫。内に人魚棲む山男。内に繭棲む音楽家。内に花棲…

お月さま 【創作】

レストランの角を曲がり、公園通りを歩いていると向こうに頭の小さな白い毛並みのほっそりとした姿が見えた。ゆっくりとこちらにやって来る。私に気づくと立ち止まった。「お月さま、こんばんは」夜の帳が下りる頃、藍色の空の下で挨拶をした。お月さまは静…

不便な翼 【創作】

理由を原因を持つ現象は良いものね。目に見えるものはそれが確かにあることを分かった気分にさせてくれるもの。やはり人は行き着くところ安心を欲するものかしら。近づくこと近づかずにいることを選べるのは良いね。手に入れるのも手に入れないのも自由でい…

好きになった瞬間

九月です。やっほう。いかがお過ごしですか。雨がよく降りますね。少しまた涼しくなり、眠りやすい夜々です。今回は一緒に暮らしてくれている猫について少しだけ書きます。大きくて重い元気な四歳の男の子なのですが、彼を見ていてふと、この子をほんとに好…

ばいばい八月ばいばい

時々、本を読んでいて世界中の鐘を打ち鳴らして周りたくなったり、声にならない叫びを上げて布団に潜り込んだり、急に窓を開けたり、勢いよくカーテンを閉めたりしたくなることがあります。そうなりたくて読んでいるのか、期せずして不意にそうなるのかはっ…

いつかのかもめは遠くなり

いつかフェリーに乗りました。短い航路でしたから身体中、心ごと味わおうと思っていました。乗り込んですぐ、船酔いをして顔色も悪く横たわる人々がありました。すべての乗り物に酔う質の私でしたが、その時は不思議と元気でした。しばらく船内にいましたが…

なつのこと

暑い夏です。それでも少し朝晩は和らいできたように感じますが、やはりまだまだ日中は溶け出していきそうな夏です。もしかしたら溶け出していっている途中かもしれませんね。体重を計りましょう。減っていませんでした。悲しいです。毎年のことですが、蝉の…

異邦人について

異邦人が十人目の登場を終えました。一つの区切りとしてご挨拶致します。昨年の八月からこのブログを始めて間もなく一年が経ちます。始めた頃には思いもしなかった喜びがありました。読みに来てくださる方々に感謝しています。ありがとうございます。異邦人…

異邦人 (十人目) 【創作】

シングルマザーである従姉妹が、小学生の一人娘を私に預け、旅行へ出かけたきり帰って来ない。隣県に住む友人に会いに行くと言って出て、しばらく経った。私も一人娘も全く動揺していない。つまり従姉妹であるところの母親であるところの彼女をそういう人だ…

たのしい幻想飛行

埴谷雄高監修のイメージの文学誌『幻想飛行記』という本を気に入っていて時々無性に読みたくなります。今がまたその時で何日か夢中で眠る前などに読んでいました。面白い好きな作品ばかり収められています。取り上げられている作家は以下です。小泉八雲、国…

ブルー七月ブルー

ここまでは雨雨雨の七月です。学生さん達はもうすぐ夏休みに入ると思います。夏休み、宿題や受験勉強や塾に追い立てられても合間にどうか楽しいことをたくさん味わえますように。見ず知らずの大人からは以上です。思い返せば色々な夏休みがありました。海や…

雨の三時の時計の話 【創作】

僕の住む街には大きな公園があります。公園には巨大なからくり時計があります。人々は街に初めて来たときや、ほんとうに幼い頃に皆この時計を愛します。だけど誰もがずっと愛するわけではありません。段々にほとんどの人が見慣れて飽きてしまいます。時計は…

魔法のない魔女

梅雨らしく雨が降りました。住宅街を傘を差して歩くと紫陽花は涼しい色で燃えています。草や葉の緑が深くなり、地面には水たまりがいくつも出来て飛び込む雨粒を受けています。濡れた小鳥が低く飛び、グラスを引っかくような声で鳴きます。とっぷりと六月で…

異邦人 (九人目) 【創作】

気分が良い理由はパウダーだった。シャワーを浴びたら淋しくなったのでまたぽんぽんした。偉いねパウダー。彼女は二週間前にそのパウダーを購入し、使っていなかった。暑い日が続き自然とパウダーが恋しくなっていた。遠い遠いどこかキッチンでオーブンから…

アリスと一角獣

とても暑い五月でした。お元気ですか。もうすぐ梅雨入りして雨の降る日が多いでしょう。雨は降っていない時に思うのも好きです。お天気雨、晴れていながら降る雨も見たいです。陽射しの中の雨はあかるいです。今回は『鏡の国のアリス』から、ユニコーンとお…

彼女のプール誰かのピアノ線 【創作】

こんな話を聞いていた。何年も前から一つのシーンを繰り返し思い描いているという女性の話だ。高い飛び込み台のあるプールです。私の他には誰もいません。静まり返ったプールで飛び込み台の上から私は目線だけ下げてプールの水面を凝視めています。長く立ち…

メロンソーダの泡の粒

に見蕩れて二時間レストランにいました。炭酸飲料は苦手であまり飲みませんが、真夏のように暑かった日、久々に飲んだメロンソーダは美味しくて綺麗でした。人工的なキャンディーグリーンがなんとも安っぽくて可愛らしく気分が浮き立ちます。身体に悪そうで…

おやすみタオルはからし色

うんと小さい頃、眠るときに必要なタオルがあった。それが無いと寝付かないので、両親は一泊の旅行でも必ずそれを荷物にした。他のもの、似たものでは全く駄目なので、タオルは信じられないくらい繰り返し洗濯された。鮮やかだった色は褪せ、握り締め、噛み…

異邦人 (八人目)【創作】

消え入りそうな火を抱えているんです。昨年の十月頃には私の中で何かが砕け散っていました。確かに十月には砕けきっていたはずです。砕けたのに終わらないものを引きずっていました。砕けるまで何かを絶えず掴んでいるように思い込んでいた時間が長過ぎたか…

四月の幻灯機上映

四月です。新年度に入り、街も人も忙しそうです。春らしい強く生あたたかな風が桜をすべて散らせていきます。花の散る様は何度見ても慣れないうつくしさです。散った花びらも道や川面を眺めることを特別にする可愛くかなしいピンク色です。暖かくなってきて…

見えない装束 【創作】

春休みはお風呂に入っている時のもわもわとした蒸気の中に漂っている。消えそうで消えない。春休みはお風呂場の天井付近を舞い、シャワーの近くで翻る。やがて行き場を失った春休みは開けた窓から出て行く。何時だったか分からない。何処か旅行先で兎を追っ…

春の新しくない本

ほんとうに暖かくなってきました。春は胸騒ぎがします。吹く風にあたると、もどかしいような気分になります。雨も春の雨だと思うと冬の間に降っていた雨とは違って見えて、なんだか無造作に降っているような感じがします。鋭さの無い柔らかな水が肌にあたる…

ゆめみのほし

おはようございます。こんにちは。こんばんは。おかえりなさい。雨の降る日が増えています。ちょっと明るい色のスプリングコートを着て色とりどりの傘を差した人々と行き交うことも多くなってきました。おかげさまで、家族は退院致しました。お見舞いのお言…

肩を叩かれ見渡せば

三月です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。春はまだ浅いですが、季節ごとの花々に暖かな陽だまりをいち早く見せてもらえているように思えます。近況報告を少しだけ致します。二月の末に家族の者が突然倒れ、手術し、今も入院しています。ですから私自身も…

雨のお姫さま 【創作】

よく晴れた朝の空を見上げながら女の子はため息をつきました。もう一週間も晴れた日が続いていました。少しでも曇ると女の子は雨が降るかもしれないと期待するのですが、すぐに空は晴れてしまうのでした。新しいお気に入りの傘を差したいわけではなく、苦手…

ドードー鳥の胸のうち 【創作】

少しで良いとドードー鳥は思いました。好きな人も好きなことも好きなものも少しで良いと思いました。たくさん欲しいと思ったこともありました。たくさんあると思っていた時もありました。しかしたくさんの物事をたくさん好きでいられるドードー鳥ではありま…

異邦人(七人目)【創作】

身を乗り出した時の頬に触れた鉄柵の冷たさが。二月でした。お兄ちゃんが生きているならもうおじさんですね。どんなおじさんになっているでしょう。想像もつきません。会っても絶対にお互い分からないでしょう。あなたはおじさんに、私は大人になっているの…

休日の愚か者【創作】

何か面白いことはないか。と友人が言ったので、食べ終えたパスタのお皿を押しのけて、頬杖ついて考えた。連休の最後の日。意味のない、罪のない遊びがしたいものだ。可笑しくてロマンティックなのが良い。お金を払って、先が全部見えるようなものは退屈だ。…

チョコレートのあまいかなしみ

二月でございますね。節分や立春も過ぎ、二月最大のイベント(かもしれない)ヴァレンタインも間近です。海外でのそれや歴史はともかく、日本ではヴァレンタインに他者や自分自身にチョコレートを贈ることになっていますね。もはや珍しいお菓子ではなくなっ…

常に寄るしばしばかりは泡なれば

『篁物語』を読み返しました。昔から小野篁が大好きです。だから作り話であったとしても彼が登場する作品は嬉しく読みます。この『篁物語』は短い作品なので古典が苦手な方も読みやすいかもしれないと思いました。岩波書店刊、日本古典文學大系第77巻に収…

何もいらない帰りたい

何もいらない小さい彼女は学校帰り、駅のホームで泣いていた。私は今よりも小さく、だけど彼女より大きかった。手をつなぎ、バスに乗った。バスはぐんぐん走り、私の家のある方から遠く離れて行った。小さい彼女はいつの間にか泣きやんでいた。窓から見る夕…

異邦人 (六人目) 【創作】

停電になった。そのおかげで味わえたのは素晴らしい本物の冬の夜だった。私は一人で部屋にいた。パジャマの上にコートを着ていつもは抱かないぬいぐるみを引っ張り出し、抱いて座っていた。静けさは美しく闇は深い。スマートフォンの明るさが邪魔になり、電…

無時間【創作】

椅子のような椅子に座っている。腕を置いているのはテーブルだと思う。椅子かもしれないものとテーブルかもしれないものに触れている。そしてカップを探している。触れるところには無いカップを。喉が渇く。気がする。立ち上がり方を忘れたように座っている…

子羊たち 【創作】

黒い子羊は白い子羊と仲良くなりたいと思っていました。みんなと一緒にではなく、二人で遊びに行きたいのでした。だけど黒い子羊は中々白い子羊を誘えませんでした。白い子羊のまわりはいつも邪魔者がいっぱいでした。ある日、黒い子羊は邪魔者たちがお喋り…

だいたい寝ています

インフルエンザに罹りました。久しぶりのインフルエンザです。やはり普通の風邪より、ちとキツイです。せっかく寝込むのだから寝込むことの浪漫を味わおうと、缶詰の桃を食べたりしました。懐かしいシロップはわざとらしく甘くてなかなかロマンティックでし…

新しい年

あけましておめでとうございます。どうしてもやっぱり年はあけました。昨年はありがとうございました。そして今年もどうぞ宜しくお願い致します。皆さんにとって良い一年になりますように。『冬の一角獣』は今年もここにいます。真剣に書きます。ふざける時…

まとめをまとめられないよ

年の瀬です。とりあえず無事にブログで皆さんにこうして年内最後の挨拶を書けているということだけで有難く思います。皆さんにとって今年はどんな一年でしたでしょうか。私は今年、原点回帰を目標に過ごしてきました。いろいろな余計に思えるものごとを排除…

花火、ゲームセンター 【創作】

小さなレジャーシートを敷いてぎゅうぎゅうに座り冬の花火を見た。体育座りの変な無口と変な金髪と変な私の三人で花火を見た。何百年も前のこと、覚えていますか。どおんどおんと音がして平静を装うのに苦労しましたね。私は時々思い出し、いまだに笑うこと…

クリスマスの贈り物 【創作】

たくさんのものをもらいながら、私はその人に何一つ贈っていない事に気付きました。みんなにプレゼントをあげるサンタクロースは誰に何をもらうのでしょう。サンタクロースが仕事を終えて帰る家に灯りを点けて、暖めて、待つ人になりたいと思いました。サン…

メリークリスマス 【創作】

雑踏で聴く賛美歌は私を泣かせる。有難いから泣くのではなく、懐かしいから泣くのでもなく、ただもう気持ちは乱高下する。きたないものをきたないと思っていることに気付く。世界にきれいなものの無いような気がずっとしていたことに気付かされる。私は本当…