冬の一角獣

真城六月ブログ

ひろがる日

 

 

 

「紫陽花、さようならあ」

 

 

 

大きな声で元気よくそう言って走り去る見知らぬ子供の後ろ姿を、なんてうつくしいんだろうと、感じ入って見送っていたら、子供に向かって「おおう。さよならあ」と、声をかけている男性が目に入りました。

 

 

一瞬で、さっきの言葉が「おじさん、さようならあ」の聞き間違いだったことを知り、六月の夕暮れに少し笑いました。


紫陽花がきれいですね。


雨があまり降らないので、雨の歌を歌いながら勝手になにか物足りないように思っていました。


遅く起きた日には、猫のブラッシングを念入りにした後で、鏡をようやく見て、ずいぶん大変な山籠りの最中のようになっている自分の髪をブラッシングします。同じブラッシングでも、猫にするのはうれしいものです。自分を後回しにしてうれしいときは、生きものとして地球の一部になれたつもりの良い気分です。

 

 

猫には驚かされています。毎日、一生で一番可愛いのだから見るたびに驚くばかりです。


雨はこれからよく降るでしょうか。頭や目蓋は重くなって、少し高いところから見る人々の傘の色にたのしさを感じることになるでしょうか。

 

夜の部屋は彷徨う船になるでしょうか。


どこかのだれかと同じ海ですれ違うときには、言うつもりです。



 

 

「またね」

 

 

 

それもこれも無限にせつないならせめてよく笑いたいです。