みること
なにをしてきましたかと訊かれたら、みてきましたと答えましょう。
なにをと問われたらいろいろなたくさんを、それでも無理にも叶ったものをだけと返します。
みることにはどの字を使えば良いでしょう。見る、観る、視る、言葉は大き過ぎたり小さ過ぎたりもどかしいものです。うつくしいことは言葉の手前、もしくは向こうに拡がっています。
みえないものを思い思い、みることは、あるときはよろこびでしたし、あるときはくるしみでした。
みることをしてきました。ひとつのものをじっと。多くのものを離れてじっと。遠いものに目を凝らし、つま先立って。近いものに穴のあくほど。大きなものは屋根に上がって、小さなものは這いつくばって。一心に。
歩きながら歌いながら眠りながら。
凝視してきました。そのつもりで、そのようです。みつめてきました。
それでなにがどうでしたとは訊かないでください。少しずつ、ばらばらにそれを明かしてきました。これからもそうするでしょう。
みること、明かすこと、みえるようにすること、そうしながらまた、隠すこと、みえなくすること、なにになるかってなにになるかとはどういうことでしょう。
なにをみなかったか。
なにを明かさなかったか。
太陽は差し伸べる腕を照らしています。